2018/06/21

革職人も惚れた! 美しき起毛革・プエブロの魅惑の全貌を公開

イタリアンレザーのひとつである「プエブロ」と、そのエイジング(経年変化)が、今注目を浴びています。
植物タンニンでなめし、染料で着色したいわゆる「ヌメ革」のなかでも、プエブロはことさらエイジングによる変化が際立つ革です。
今回は、東京都台東区にあるプエブロ製品を製造する革製品工房「HIS-FACTORY」の取材協力のもと、プエブロのエイジングにおける魅力とその秘密について触れていきます。

こんなにも違う!熟成する起毛革「プエブロ」

熟成する起毛革「プエブロ」
下に敷いたものが加工前の革。鞄製品となって使用を重ねたものを比べると、プエブロの色や表情はこんなにも違います。
新品時の素朴な風合い、そしてこの劇的なエイジングによる変化、プエブロにはヌメ革の魅力が凝縮されています。
上記写真は、プエブロの新品時の状態と、製品になってエイジングが進んだものです。
全く違う革のように見えますが、実はどちらも同じ色のプエブロなのです。
経年変化した茶色は熟成されたウイスキーのように、経年変化した青色は深海の底のように見事に変化しています。
色、そしてツヤの深みが同じ素材とは思えないほどです。
一般的にヌメ革は経年変化が大きい傾向がありますが、なかでもプエブロは短期間で劇的に変化する皮革素材です。
逆に時間の経過とともにゆっくり変化する牛革も存在します。
こうした違いは、皮革のなめし段階や製法によって大きく変わるのです。

製法、染色の違いが皮革素材の特性を決める

食肉用の牛から採取された皮は、そのままでは腐敗や乾燥、硬化してしまうため、「なめし」作業で防腐処理を施します。また、漢字にも表れているように皮を柔らかくすることも「なめし」です。
この作業を施すことで、動物から採られた「皮」は、腐敗せずに長期間しなやかさを保つ「革」へと変化するのです。
なめしには以下の2つの方法があります。
・植物性化合物であるタンニン(植物の渋)を使う方法
・塩基性硫酸クロムという化学薬品を使う方法
一般的には、タンニンなめしがクロムなめしよりもエイジングしやすい革になります。
また、なめしとともに施される染色によっても、エイジングに違いが現れます。
染色には、表面へコーティングするように着色する顔料仕上げと、色素を染み込ませる染料仕上げがあります。
色の染み込みがあるぶん、染料仕上げは顔料仕上げよりもエイジングが起きやすくなるのです。
これをまとめると、以下の図のようになります。

◆皮革素材の製造法の違い

タンニン鞣し クロム鞣し
染料仕上げ
エイジングしやすい
顔料仕上げ

※記号はエイジングのしやすさ

プエブロはタンニンなめしに染料仕上げを施した革、いわゆる「ヌメ革」のひとつです。
プエブロがエイジングによって劇的な変化を遂げる理由のひとつが、この製法の違いにあるわけです。
今まで述べてきたように、エイジングによって使う人ごとにそれぞれ違った濃淡が生まれ、「自分色」に育てられるところがヌメ革の魅力。
ただし、ヌメ革は買った当時の風合いを長く保つことが難しい素材でもあります。
また、エナメルを思わせるようなきらびやかな発色と光沢を求めるならば、クロムなめしで顔料仕上げした革が最適です。
そうした革ならキズもつきづらく、買ったときの風合いがかなり長く保たれます。
つまりタンニンとクロム、染料と顔料の違いは、あくまでも素材としての特性の違いを生み出すものであって、「どちらが良い」というものではないのです。
手作業でヤスリをかける
ヌメ革のなかでも一風変わった素朴な風合いを持つプエブロ。独特の肌触りはその表面に手作業でヤスリをかけることから生まれています。

バケッタ製法をベースにヤスリがけで起毛処理を施した「プエブロ」

プエブロを世に送り出しているのは、イタリアのトスカーナ地方にあるバダラッシー・カルロ社。
同社は1000年もの歴史を持つ伝統的なバケッタ製法を現代に甦らせたことで知られるタンナーです。
その代表的なめし製法としてバケッタ製法があります。
バケッタ製法では、職人が植物性タンニンで時間を掛けて丹念になめした革を、さらに畜産牛のすねの骨などを煮出して抽出した牛脚油を染み込ませます。この作業を加脂と言いますが、これこそがエイジングしたときに現れるオイリーな艶の秘密でもあります。
すべての工程を手作業で行い、手間と時間をかけることで、バダラッシー・カルロの製品は他の皮革素材とは別格の風合いを醸し出しています。
なかでも「プエブロ」は、一風変わった風合いを持つ素材。
この名前はアメリカの南西部やメキシコ北部に残るネイティブ・アメリカンから採られたもので、プエブロが持つ民族的で素朴な風合いから名づけられました。
プエブロが持つこの独特な風合いは、バケッタ製法でなめした革の表面にヤスリをかけて起毛させることで生まれています。
このヤスリがけも、実は手作業で行われているもの。
プエブロはバダラッシー・カルロ社の製品のなかでも、実はひと際手間がかかっている製品なのですね。
この仕上げは、あくまでも艶やかさと滑らかさを失うことなく、それでいて他のヌメ革とはまったく違う、スエードを思い出させるような肌触りを実現しています。
これは、表面処理がそれだけ繊細である証!
そのため、擦れたりすることで表面の起毛はたやすくならされてしまいます。
結果的に、革の色とツヤがみるみる深みを増していくのです。
レザーバッグ職人もプエブロを絶賛します。
ホン・モノ・ケイカクが取り扱っているフルレザートート「ガットゥーゾ」を手がけるHIS-FACTORY代表・中野克彦さんも「完成した革に、さらに手を掛けてこの独特の質感を出しているのに、キズや型崩れに強い質感はほかにないですね」と語っています。
数あるヌメ革のなかでもプエブロのエイジングがいち早く、しかも劇的に起こることのもうひとつの理由が、この表面処理にあるわけです。
個性が際立っている
バダラッシー・カルロ社の製品の中でも個性が際立っているのが、プエブロなのです。
ひっかき傷
このように表面にひっかき傷がついても…
手で撫でる
ひっかき傷にも強いのが特徴
この通り! 繊維の隅々まで油脂が行き渡ったプエブロは、ヌメ革としてはひっかき傷にも強いのが特徴です。爪で軽く傷つけても、加脂された繊維が復元し、手で撫でるとまったく見えなくなってしまいます。

プエブロに興味を持ったあなたにオススメのアイテムは?

丁寧に時間をかけて作り出されたプエブロは、適切に扱い、ケアすることでとても長持ちする革素材です。
プエブロを試してみたいという方はまず、小物から入ってみてはいかがでしょうか。
4連コインキャッチャープエブロver.
池之端銀革店のブランド、ボクレが手がける「4連コインキャッチャープエブロver.」は、メタルパーツに10円玉、50円玉、100円玉、500円玉をそれぞれ個別に差し込んでいく、ちょっとオールドスタイルなコインケースです。
カードポケットも装備し、実用性も十分です。

BOCLEF ボクレ
4連コインキャッチャープエブロver.

プエブロの魅力を存分に味わってみたいという方は、当記事でもご協力いただきましたHIS-FACTORYが手がけるフルレザートート「ガットゥーゾ」はいかがでしょうか。
フルレザートート「ガットゥーゾ」
プエブロの持つ“表情”をしっかり魅せるため、あえて表面にはポケットなどを配置せず、広大な“面”を活かしたデザインを採用しています。
エイジングによって刻々と風合いを変えていくプエブロの魅力を存分に味わうことができます。
手縫いのハンドルなど、細部に注ぎ込まれた技術の高さも魅力のひとつです。
バッグの内側にはスマートフォンなどを入れるのにピッタリのサイズのポケットや、スリットが施された底板、キーチェーンを取り付けるのに便利なD環リングを装備するなど、実用性にも配慮がなされています。

HISFACTORY ヒズファクトリー
フルレザートート「ガットゥーゾ」