2016/03/11

ホンモノ素材辞典vol.2 ◆世界に誇る純国産「サムライレザー」 黒桟革/くろざんがわ

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 ホンモノケイカクで使用する革やナイロン、ファブリックなど、素材を中心にご紹介していく素材辞典。第2回目は、戦国時代以前からの歴史を誇り、日本国内の革で最も価値が高いと言われる「黒桟革」をご紹介します。

武将クラスだけが使った贅沢な革

 当店が取り扱う財布の素材中、もっとも価値が高く、稀少な存在と言えるのが、姫路の坂本弘さんが作る「黒桟革」です。
 その生産の歴史は、戦国時代以前までに遡ると言われています。漆でコーティングされた革は刃で切りにくい特性があるため、上級武将クラスの甲冑のつなぎの部分などに使われていたという資料があります。また坂本さんによると、鉄粉を溶かした液を含浸させる(漆と化学反応を起こし、漆黒の色へと変化する)ため、切りこんだ刃の一部を錆びさせる効能もあったのではないか、とのこと。古の戦場で珍重されるだけの機能性を持った革だったのです。
 しかし、現代では、剣道で使われる「胴」、しかもハイエンド品の装飾部分のみということもあり、現在商業ベースで生産するのは、世界で坂本さんひとりとなってしまいました。

手間と根気の作業で作られる極上の美しさ

 革と漆を使う伝統工芸で、よく見るのが「印傳」です。その違いもお話しておきましょう。
 印傳の場合、鹿革の上に柄のついた版をのせ、そこに漆を「刷り込んで」乾燥させます。要はインク(漆)を使ったスクリーン印刷です。ですので、漆の柄部分を曲げると割れてしまいます。
 黒桟革は、漆を革全体に塗って「擦り込んで」コーティングし、何度も重ね塗りすることで強度を上げているものです。
 しかし黒桟革は、その特殊性ゆえ、非常に手間がかかるプロセスを経て作られます。
 簡単に説明すると…
 国産黒毛和牛の原皮を、姫路の伝統的な「白なめし」という製法で滑らかにしてから、揉み込んでシボ革を作り、漆を揉み込んで重ね塗りして作ります。
 白なめしは、国産黒毛和牛からとった塩漬け原皮を、川の水に長時間さらし、微生物の作用で毛根を緩めて脱毛。その後天日で乾燥させ、塩と植物油を使って、時間をかけてなめしていきます。
 できあがった白なめしを今度はしっかりと揉み込み、表面にデコボコのシボを作っていきます。その後に漆をすり込んでは一定湿度の中で乾かしながら化学変化をおこし…を繰り返すこと7~8回。
 たった1枚を仕上げるのにも約1カ月かかります。
 通常、なめしと革の加工は分業ですが、この間、坂本さんはすべての作業を一人で手掛けます。
 基礎となる下地の白なめし作りと、漆を擦り込む作業。ふたつの作業を融合させるのは、それぞれの物性を知り尽くしている坂本さんだけがなせる技です。

黒桟革の歴史を変えた超難度の「藍染」

 当店で販売する黒桟革の中でも「青藍」は、黒桟革の歴史の中ではじめて、ベースの革を天然インディゴ染めで仕上げたもの。
 この開発が苦難の連続でした…。
 基本的に牛革などの動物皮革は、人間の肌と同じ弱酸性。pH4.5~6くらいです。 一方、染色材料の天然藍は、pH値12以上の強アルカリ性。
 これを合わせると、牛革に含まれている脂が加水分解される化学反応(鹸化/けんか というそうです…)が起き、仕上がった革は脂が抜けガビガビのものになってしまいます。
 つまり元々の相性は最悪なのです…。
 これをなんとかするため、坂本さんが研究に研究を重ねました。原皮のさらなる厳選、染色の方法などの独自レシピにより、元々バリつきやすい藍染めの革を滑らかに仕上げられるようになりました。また藍染めで心配されるのが色落ちですが、業界内で設定されている厳しい色落ち基準もクリアしています。
 動物の「皮」から「革」を作ることとは、次々に起こる「化学変化」を、絶妙なタイミングでコントロールすること。
 この青藍をプロデュースしたときに、それを深く認識して、感動したのを覚えています。
 革を作る職人さんたちは、経験や勘だけでなく、こうした科学的なデータを蓄積し、ムラの少ない安定した供給ができるよう、日々努力されているのです。
 こうした努力が実を結び、日本のみならず世界中のメーカーがこの「サムライレザー」の美しさに注目。今やパリコレでランウェイを彩る素材となっているのです。
参考:姫路黒桟 坂本商店
http://himejikurozan.net/

当店黒桟革アイテム ラインナップ